■VOL.9「そこまでするか!?」

いやー、暑い夏だった。ただでさえコンクリートジャングルの東京はムシ暑いのに、今年は「美少女写真集」(来夏発表予定)の撮影スケジュールがギッシリ詰まっていて大変だった。体感温度は40度を越え、連日のように仕事の海で溺れかけた。

そんな中、やっぱり来た。将来の夢と厳しい現実のはざまで、もがき苦しむ若者たちが沢山…。
はるばる田舎から出てくるには、やっぱり夏休みくらいしかないのだろうか。
いくら人生がかかっているとはいえ、平日、勝手に学校を休めばプチ家出と見なされてしまうから仕方ないのかもしれない。

今回は、遠路はるばる青春18切符で上京した女子高生のナマの声を紹介しよう。 昨年まではなかった相談の中身に私は仰天したが、今の日本の姿が垣間見えるようだ。

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【質問】プロカメラマンになりたいのですが、カメラを買うおカネがありません。 父親は失業中で当てになりません。とりあえず東京に出て、どんな仕事でもやって資金を貯めたいと思っています。 私はフーゾクだって何だってかまいません。(女子高3年 Y.T)
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柳沢「キミの境遇はわかるし、同情もします。しかし本当にフーゾクという言葉の意味を知っているの?」

読者「だいたい想像はつきます。どうせ彼氏に対してするのと同じことをするんでしょ。 だから、たいして抵抗はないです。もう処女じゃないし…。 先生、教えてください。フーゾクで働くのは悪いですか」

柳沢「困ったな。そう真顔で聞かれると答えにくい。それに悪いか悪くないかは、最終的にはキミが決めること。 価値観の問題だからね。もしキミがボクの恋人だったら、力づくでも阻止すると思うよ。 ところで家族には相談したの?」

読者「相談なんてしてないし、する気もありません。親だって文句を言う資格はないはずです。 じゃあ、先生が私の立場だったら、どうしますか?」

柳沢「そこまでしてプロカメラマンになりたいとは思わない」

読者「なぜ先生は、プロカメラマンになったんですか?」

柳沢「時代の流れに身を任せていたら、いつのまにかなっちゃっただけです」

読者「ずいぶん、いい加減ですね(笑)」

柳沢「そう、いい加減な男です。いわば『フーテンの寅さん』みたいなもんです(笑)」

読者「でも写真は完璧ですよね。私、先生の大ファンです」

柳沢「ほめてくれて、ありがとう。ちょっと照れるな…何も出ませんよ(笑)」

読者「初めから何も期待していませんから…(笑)」

柳沢「どんな仕事でもいいけれど、もっと自分を大切にしてほしいな。 こんな言い方したら怒るかもしれないけど、プロカメラマンなんかにならなくてもいいじゃない。 フーゾクで働いてまで資金を用意するほどの仕事かどうか、ボクにはわからない。 だけど絶対、キミには幸せになってもらいたい。せっかく、こうやって会えたんだから…」

読者「……」(気丈そうな彼女は、黙ってコクリとうなずいた)


時代の大きなうねりのなかで、以前にも増して人々の価値観が揺らいでいる。誰もが、さまよえる小羊だ。
「袖ふり合うも多生(他生)の縁」これまで私のもとへ相談に訪れた若者たちが、 みんな充実した人生を送ってくれることだけを祈っている。


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