唯我独尊Q&A編
第13回


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どういう人のことを有名カメラマンと呼ぶのですか? (栃木県・38才・会社員)


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これは難問ですね。一般的に簡単そうに見える質問ほど実は答えるのが難しいのです。なぜならば何を基準にするのかが、まったく不明だからです。 スポーツの世界だったら、国内外で最も有名なのは高橋尚子選手、プロ野球だったらイチロー選手…といったように、ほとんどの人が納得する答えが見つかるのに、写真の世界では、そうはいきません。

日本中のアマチュアカメラマンなら誰でも知っている写真界の大御所・Aさんですら業界外の人には全然知られていないし、アイドル写真で一世を風靡したSさんでも女の子に興味のない人には全く知られていません。 ではテレビに出ている人ならば、みんなが知っているかというと、そういうわけでもありません。

よくコメンテーターとしてテレビに出ているAさん(ビートルズの写真)やKさん(過激な女の子の写真)、Yさん(写真集の数が日本一)だったら大丈夫だろうと思っても 「あの人、写真家って肩書ついてるけど本当に写真撮ってるんですか?」などと聞かれてしまいます。 「そんなこと知らないの。ジョーシキだよ」と言っても、逆に軽蔑の目で見られてしまいます。

どうしてもSさんの存在を相手の胸に植えつけようとすれば「Sさんというのは、あの宮沢りえの写真集撮ってベストセラーになったカメラマンのことだよ」と強調しなければなりません。 そこまでしても「あっ、そうなの。私も、りえちゃんの写真集を持ってるけど、カメラマンの名前なんて誰も見ないよ」と言われてしまいました。

それにしても写真関係者ではない人たちと話すときは本当に神経を使います。 「○○さんのように…」というように、気軽に先輩たちの名前を使えないのです。しかし同じ芸術関係に携わる自由人でも売れっ子小説家だったら、かなりの知名度があります。 あるいは同じ映像でも映画監督のKさん(「七人の侍」や「羅生門」)だったら世界中に「巨匠」として名前が広まっています。なぜ写真家の名前だけ、いくらメジャーになっても人々の心に浸透していかないのでしょう。

余談が長くなってしまいましたが、要するに、いくら有名カメラマンといっても、それは写真業界の中でのことなのです。さまざまなジャンルで活躍するトッププロも、それぞれの世界での有名人にすぎません。 ちょっと凶悪犯罪を起こせば一躍、誰でも有名になれるほどメディアが発達した現代にあって、真の有名カメラマンが登場しないことを不思議に思うのは私だけでしょうか。

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