柳沢 | 「キミの境遇はわかるし、同情もします。しかし本当にフーゾクという言葉の意味を知っているの?」 |
読者 | 「だいたい想像はつきます。どうせ彼氏に対してするのと同じことをするんでしょ。だから、たいして抵抗はないです。もう処女じゃないし…。先生、教えてください。フーゾクで働くのは悪いですか」 |
柳沢 | 「困ったな。そう真顔で聞かれると答えにくい。それに悪いか悪くないかは、最終的にはキミが決めること。価値観の問題だからね。もしキミがボクの恋人だったら、力づくでも阻止すると思うよ。ところで家族には相談したの?」 |
読者 | 「相談なんてしてないし、する気もありません。親だって文句を言う資格はないはずです。じゃあ、先生が私の立場だったら、どうしますか?」 |
柳沢 | 「そこまでしてプロカメラマンになりたいとは思わない」 |
読者 | 「なぜ先生は、プロカメラマンになったんですか?」 |
柳沢 | 「時代の流れに身を任せていたら、いつのまにかなっちゃっただけです」 |
読者 | 「ずいぶん、いい加減ですね(笑)」 |
柳沢 | 「そう、いい加減な男です。いわば『フーテンの寅さん』みたいなもんです(笑)」 |
読者 | 「でも写真は完璧ですよね。私、先生の大ファンです」 |
柳沢 | 「ほめてくれて、ありがとう。ちょっと照れるな…何も出ませんよ(笑)」 |
読者 | 「初めから何も期待していませんから…(笑)」 |
柳沢 | 「どんな仕事でもいいけれど、もっと自分を大切にしてほしいな。こんな言い方したら怒るかもしれないけど、プロカメラマンなんかにならなくてもいいじゃない。
フーゾクで働いてまで資金を用意するほどの仕事かどうか、ボクにはわからない。だけど絶対、キミには幸せになってもらいたい。せっかく、こうやって会えたんだから…」 |
読者 | 「……」(気丈そうな彼女は、黙ってコクリとうなずいた) |